【Art&JP Novel】獣装戦隊ビーストレンジャー 32話 『師匠ピンチ!?怪人ボアラバーの卑劣な技』
「ぐぬぬうう……ッ! この私が……! この怪人ドクスネイク様が負けるはずが無いのだァ!!」
街中に聞き苦しい濁声が響き渡る。声の主は紫がかった鱗を持つ、怪人ドクスネイクと名乗る蛇人。息を切らしながら、憎しみの眼で見つめる先には三人の獣人達の姿があった。
「いいや、お前はここまでだドクスネイク!」
その内の一人、赤を基調にして黄色のラインが入ったタイツ──所謂ヒーロースーツに、黄色のラインが入った白いブーツにグローブ、そしてバイザーを身に付けた犬獣人が声高々にして叫ぶ。
「善良な人達に危害を加える悪を、俺達ビーストレンジャーは決して許さない! 行くぞ皆!」
ビーストレンジャーの一員を名乗る犬獣人の言葉に、左右に立っていた黄色いラインの入った青いヒーロースーツを着た猫獣人、橙色のラインが入った黄色のヒーロースーツを着た虎獣人が頷く。
それぞれが取り出した機械製のヒーローデバイス──剣に拳銃、大槌を掲げると、それぞれが変形して組み合わさり、大きな銃身へと姿を変える。
「「「獣装合体!」」」
レッドの手から燃え盛る炎のエネルギーが。ブルーの手から凍てつく氷のエネルギーが。イエローの手から轟き走る雷のようなエネルギーが銃身に注がれる。
ビーストレンジャーはそれぞれのデバイスに己の能力を付与して戦う。そしてそれ等全てを繋ぎ合わせ撃ち出す大技の名を──。
「「「奥義──ビーストマグナム!」」」
掛け声と共に轟音が鳴り響き、巨大な銃口から光る弾丸が発射される。
「ぐ、クソぉぉおおおお!!!」
光る弾丸はドクスネイクに避けるいとまも与えず直撃した。
地を震わせる轟音と共に、光に飲まれたドクスネイクは断末魔を上げ、そのまま爆散するのであった。
「あっぶねえ……今回の奴は中々手強かったな……」
赤いヒーロースーツを着た犬獣人のヒーローは、緊張が解けたのかぶはぁ、と息を吐いてその場に座り込んだ。
声の高さやその身長、や立ち振る舞いから見るに、悪と戦う正義のヒーローとしては随分幼いようだった。
「同感です。ですがレッドが最初に何も考えずに特攻しなければ、もう少し余裕を持って倒さたんじゃないですか?」
その横に立つ青いヒーロースーツを着た細身の猫獣人のヒーローは、バイザーに触れながら犬獣人のヒーロー──レッドに文句を言った。
身長はレッドよりも少し低く、声も高い。
「うっ、悪かったってブルー。でもそのお陰で一撃入れられて優位に戦うことができただろ?」
ブルーと呼ばれた猫獣人のヒーローは一度ため息を吐くが、少し考え直すようにしてから口を開いた。
「僕とイエローの援護があったからですが……確かに、あそこで傷を与えていなければ逆にもっと追い込まれていたかもしれませんね……」
「だろ!?」
「ま、倒せたんだから良いだろ」
笑顔を浮かべるレッドの横で、イエローと呼ばれた、二人に比べれば縦にも横にも大きい虎獣人のヒーローは、どっしりと胡座をかきながらそう言うのだった。
二人に比べれば声は低いがまだ彼にも何処か少年としての幼さを感じさせる。
そう、彼ら少年達は獣装戦隊ビーストレンジャー。悪の組織ワルダーク率いる怪人、戦闘員達の魔の手から人々を守り、平和を愛する正義のヒーローなのだ。
ブルーが変形して出来上がった大きな銃身──ビーストマグナムに触れると、合体が解けそれぞれの武器の形に戻っていく。怪人ドクスネイクを討ち、安全を確認したレッドは剣、ブルーは拳銃、イエローは大槌を取り戦闘態勢を解こうとする。
しかし、その時の事だった。
「随分お疲れのようだな、ビーストレンジャー」
頭上から聞こえた邪悪な声。それと同時に、おびただしい数の矢がビーストレンジャーに向かって降り注いできた。
「ぐあ……ッ!?」
「う……ッ!」
「……ッ!!」
不意打ちをくらい、三人全員が見事にその攻撃を受けてしまう。
痛みに片足を着き、一瞬だけ全員の思考が止まる。しかし息をする間もなく、頭上から二度目の矢の大群が降り注いだ。
「ど……おりゃッ!」
力を振り絞ってイエローが大槌を振ると、稲妻を纏った大風が巻き起こる。迸った稲妻は何本かの矢を焼き落とし、大風は残った矢の大群を跳ね返した。
ブルーは頭上に焦点を合わせると、空中ではばたく攻撃をしてきた主──蝙蝠人の怪人に向かって氷の弾丸を放つ。
「おおっと!」
蝙蝠人の怪人はすんでのところで弾丸を避けると、今度は大量に生成した矢を一点にまとめ巨大な槍を作った。空を飛ぶ蝙蝠怪人にとって最も有効な攻撃手段を持つブルーに照準を合わせるとその心臓目掛けて解き放った。
「う……ッ!」
大風でも跳ね返せない質量、弱った身体では避ける事のできないスピードで突き進んでいく巨大な槍はブルーの心臓を貫く──その前に、レッドが間に割り込んだ。
「レッド!!!」
ガキィイイン!! と金属同士がぶつかる甲高い音が鳴り響く。巨大な槍はレッドの炎を纏った剣撃によって、見事左右に割かれブルーの後方にある地面を穿った。
「レッド……ありがとうございます……! 大丈夫ですか!?」
「ぐ、う……。お、おう、問題ねえぜ」
しかし、とてつもない質量と速度で直進してきた槍と正面からぶつかりあったレッドの手は、剣を支える握力を維持できずその場に剣を落としてしまった。
「ギヒヒ! 満身創痍じゃねぇか。どうやら貴様等ヒーローもここでお終いのようだな」
蝙蝠怪人が下品に笑う。しかし、蝙蝠怪人の放った言葉は事実であった。レッドは剣を握れない。イエローの技では巨大な槍に対応できない。攻撃手段はブルーの拳銃だけだが、それ単体では避けられてしまう。
ビーストレンジャーの皆が歯を食いしばり、蝙蝠怪人を見据える。この状況を何とかする手段がないか思考を巡らせるが、それを嘲笑うかのように蝙蝠怪人は空を旋回しながら、大量の矢を生成し並行して巨大な槍を作っていく。
「弱ってるところを襲うなんて卑怯だぞ! 降りてきて正々堂々勝負しろ!」
「ギヒヒ! 悪の怪人に正々堂々もあるか。勝ちゃあ良いんだよ勝ちゃあ」
レッドが上空に向かって吠える。その間もブルーは拳銃で蝙蝠怪人を狙うが、全てすんでのところで躱されてしまう。
生成され矢と槍の数がどんどん増していく。イエローがその大柄な身体を動かし座り込むレッドとブルーの前に立つが、頭上に浮かぶ全ての矢と槍を防ぐ事は不可能だろう。
「さァて、これぐらいで充分か♡」
蝙蝠怪人の目がギラリと怪しく光る。空中に留まっていた矢と槍が動き出し、ビーストレンジャーに向かって振り注ごうとする。その瞬間だった。
「そこまでだ」
空中で旋回していたはずの蝙蝠怪人の真横に、巨体のバーニーズマウンテンドッグ獣人が接近していた。
「な……ッ? ぅゲエッ!!!」
撃ち込まれたバーニーズマウンテンドッグ獣人の拳が蝙蝠怪人の脇腹にクリーンヒットする。メキメキと音を立てながら蝙蝠怪人は吹き飛ばされ、地面に向かって叩きつけられてしまった。
「師匠!」
曇っていたレッドの表情が一気に明るくなる。
白を基調に黄色いラインが入ったヒーロースーツ。黒のグローブとブーツ、バイザーを身に付けた巨体のバーニーズマウンテンドッグ獣人──。
蝙蝠怪人を殴り飛ばしたその人は、ビーストレンジャーの師匠、ヒーロービーストシルバーであった。
「ぐ、貴様ァッ!」
不意打ちを突かれ逆上した蝙蝠怪人は、同じく地に着地したビーストシルバーに向かって大量の矢と槍を降り注がせる。
「ヌゥンッ!!」
ビーストシルバーはその丸太のように太い脚で地面を踏みつけると、その巨体を翻し、宙に向けて回し蹴りを放った。蹴りは巨槍の先端の側面に綺麗に直撃し、瞬時にして砕き折った。
蹴りによる風圧が巻き起こり、大量に降り注いでいた矢は全て吹き飛んでしまう。
「すげぇ……」
師の圧倒的な戦い方に、レッドは感嘆の声を上げる。
そして、風圧で減速した他の巨槍が地面に刺さる頃には、ビーストシルバーは蝙蝠怪人の目の前にまで距離を詰めていた。
「馬鹿な、お前にはロックバイソンがあたっていたはず……」
「奴はもう倒した。残りは貴様だけだ」
ビーストシルバーが専用のデバイス──機械製のブラスナックルを嵌めた右拳に力を込める。蝙蝠怪人は後方に飛んで逃げようとするが、ビーストシルバーの拳の方が速かった。
「獣装奥義──ビーストナックル!!」
「────ッッ!!!」
身体から生み出される運動エネルギーを増幅させる──それがビーストシルバーの能力だ。それを専用のブラスナックルがサポートし本来の120%の力を発揮させる。
ビーストシルバーの拳が蝙蝠怪人の鳩尾を貫き、瞬間、激しい閃光が広がった。
ドゴォオオ……! という轟音と共に大風が巻き起こる。風はビーストレンジャーの元へ到達し、飛んでくる瓦礫から目を守る為三人は腕を前にかざして防いだ。
「う……ッ」
風が止み、ビーストレンジャーの三人は閃光の起きた爆心地へと視線を戻す。
巻き上がった煙が晴れていき、煙越しにぼやけて浮かび上がっていたシルエットが鮮明になっていく。丸太のように太い腕と脚、中年太りで肉づいているが、鍛えている事がわかる小山のように膨らんだ胸筋。弧を描いてしまっているが、ただの贅肉の塊では無いことがわかる張りのある大きな腹。
蝙蝠怪人の姿は既に無く、その場に立っていたのは彼等が師匠──強面のバーニーズマウンテンドッグ獣人ヒーロー、ビーストシルバーだけであった。
*****
秘密裏に建造されたビーストレンジャーの拠点の中にある休憩所。怪人を倒し帰還したビーストレンジャー達は、戦いで疲れた身体を休息で癒していた。
「それじゃ、結局師匠は僕達と同時刻にあたっていた怪人クレイディア、追加で投入された怪人ロックバイソン、そしてあの蝙蝠怪人の計三体の怪人を倒したって事ですか」
「バケモンだな」
そんな中、ブルーはスポーツドリンクを飲みながらやや引き気味にそう呟いた。
イエローもブルーの意見に同調する。
「ふ、お前達にもいずれこれぐらいは出来るようになってもらわねば困るぞ」
椅子に腰掛け腕を組みながら、中年のバーニーズマウンテンドッグ獣人は強面の上によく見ないと分からない程度の笑みを浮かべた。
タオルを首に掛けながら、椅子の背もたれに体重を預けるその姿はおっさん臭くはあったが、強者としての貫禄を感じさせた。
その身体は大人として見てもに縦にも横にもデカく、手足の太さだけでも細身のブルーの胴体の二倍程はあり、身長も立っているブルーの高さを座高だけで優に抜いてしまっていた。
「はい! って言いたいのは山々だけど……自信無くしちまうぜ。こっちは三人で一人の怪人に苦戦してたってのに……」
椅子に座っていたレッドはそう言いながら、テーブルの上に腕を伸ばして倒れ込み脱力していた。そんなレッドに対して、シルバーは口を開く。
「ふむ、あまり甘やかしてはならんのだが……報告を見る限り、ドクスネイクはかなり強力な怪人だった。ワシ一人でも同様に苦戦しただろう。反対にワシにあてられたクレイディア、ロックバイソンは明らかな時間稼ぎを目的とした怪人だった。お陰でワシにとっては戦いやすかったがな」
「師匠を足止めして、確実に僕達を仕留めようとしていたって事ですか?」
ブルーがペットボトルのフタを閉めて口を開く。それを受けて、シルバーはコクリと頷いた。
「そうだろうな。短期間で四体の強力な怪人の投入──奴等もワシ等の存在に危機感を覚えているのだ。次はどんな手段をとってくるかわからん。くれぐれも警戒を怠るなよ」
シルバーの言葉によって場に沈黙が訪れる。
それも当然だろう。シルバーが助けに来なければ命を落としていたかもしれないような戦場に身を投じているのだから。正義のヒーローとは言え、彼らもまだ未熟な子供。次は更に敵の攻撃が激しくなるかもしれないと言われれば尚更だ。
「まあ、何が来ても今回みたいに師匠が何とかしてくれるだろ」
本音が半分と、今回の件で自信を無くし拗ねた気持ちが半分なのだろう。レッドが投げやり気味にそう言うと、シルバーは少し厳しい口調で叱りつけた。
「何を甘えた事を言っている。それでも正義のヒーロービーストレンジャーか」
「う……ごめんなさい」
それを受けてレッドは目を閉じると、より一層落ち込んだ様子で顔を伏せた。
しかし、レッドだけではなくいつも冷静沈着なブルー、そして大雑把で図太い性格のイエローですら何処か落ち込んでいる様子だ。
そんなビーストレンジャーの様子を見たシルバーは仕方がないなと言った様子で続けて口を開いた。
「それにワシももう歳だ。救える数には限りがある。そして、新しい時代というものは常に未来ある若者が作る物だ」
腕を組みながら目を瞑り、フンと鼻息を吐く。そして片目だけ開くと三人を見つめ、再びよく見なければ分からない──少し口の端を上げる程度の笑みを浮かべた。
「悪を挫き平和を守る正義のヒーロー──その可能性をお前達に見出したからこそ、司令はお前達をビーストレンジャーに任命したのだ。ワシもお前達には期待しているからこそ、いつも稽古を付けているのだぞ?」
「師匠……!」
レッドは顔を上げると、瞳に涙を浮かべながら師匠の名を呼んだ。そして勢い良く立ち上がると、両手を上げて叫んだ。
「俺頑張る! 師匠みたいな、皆を安心させる事ができる強くて頼れるヒーローになる!」
その様子を見たブルーは少しだけ笑顔になると、仕方がないといった風に口を開いた。
「全く、単純ですねレッドは」
「同感だな」
普段はあまり感情を表に出さないイエローも笑みを浮かべてブルーに同調する。
シルバーの言葉とレッドの立ち直りによって、先程まで沈んでいた空気が消え去り、場は一気に明るくなるのだった。
(お前達も人の事は言えんがな……)
仲良さそうにレッドとじゃれ合うブルーとイエローを見て、シルバーは一人そんな事を思うのだった。
*****
「じゃあな〜ケント!」
「おう、また明日!」
手を振って別れの挨拶をする狼獣人に向けて犬獣人の少年、犬斬ケント──ビーストレッドは同じく別れを告げた。そして歩きながら顔を上げ、くぁ、と大きな欠伸をする。
「ふぁ〜眠ぃ……平和を守りながら学校も行かなきゃいけねぇだなんて……ヒーローは大変だぜ……」
ドクスネイクと蝙蝠怪人の襲撃から一週間。学校を終えたレッドは帰路へと付いていた。
あれから怪人に襲撃されるような大事件は起きていないのだが、組織ワルダークが行う悪事はそれだけではない。能力を持たない末端の兵士、戦闘員達を使った強盗や暗躍など、獣人の力の範囲で行える悪事も日々行っているのだ。
怪人の能力によって強化されているのか、戦闘員達は一般的な獣人よりは身体能力が高い為、その場合でもヒーローが出動しなくてはならない。
その上平和を守る為に訓練も欠かさず行わねばならないのだから、彼等ビーストレンジャーには休息という物がほとんど無かった。
「ブルーの奴は何でいつもあんな平気そうな顔で任務につけてんだ? イエローは……多分気にせず授業中でも寝てんだろうな」
ビーストレンジャーはシルバーを除き皆歳は同じだが、それぞれ別の学校に通っている。勿論レッド──犬斬ケントがヒーローだと知っている者は学校にはおらず、昼間は一般的な学生となんら変わらない生活を謳歌していた。
そして今日も、一般的な学生が過ごす下校の時間という物を送るはずだったレッドの元に緊張感のある着信音が鳴り響く。
「この音は……!」
着信音の発生源──ポケットに手を突っ込むと、そこには振動するヒーローデバイスが入っていた。素早く取り出しボタンを押すと、そこから聞き馴染みのある低い声──ビーストレンジャーの司令、熊渡の声が発せられた。
『犬斬君! 緊急招集だ!』
「緊急招集──って事は」
『君の想像通りだ。S-26地区に組織ワルダークの怪人が現れた。他のビーストレンジャーと共に直ちに現場に向かってくれ』
「……わかりました! 今すぐ現場に向かいます」
レッドはそう答えると、振り返って司令の言われたS-26地区方面へと目を見定めた。
「昨日に続いて今日もかよ。確かに師匠の言う通り、アッチも随分必死みたいだな」
そう言って先程通信に使っていたヒーローデバイスを前にかざすと、レッドは声を上げた。
「変身!」
端末が激しく発光し、拡散した光が犬斬ケントの身体を包み込む。身体を包み込んだ光は学生服のシルエットを変え、ケントの幼いながらも筋肉質な身体をくっきりと浮かび上がらせるデザインへと変えていく。
そして光が弾け飛ぶと、そこには黄色のラインが入った赤いヒーロースーツ。黄色のラインが入った白のグローブとブーツ。バイザーを装着したビーストレンジャーレッドの姿があった。
「待ってろよ皆、今行くからな……!」
デバイスが変形、使い慣れたレッド専用の剣──ビーストブレイドに姿を変える。それを手に取ると、レッドはその場を全力で駆け出すのだった。
*****
「ガッハッハ〜! テメェら全員、このボアラバー様の忠実な下僕、ワルダーク戦闘員に変えてやるぞぉ〜♡」
「お前さんのじゃなく組織ワルダークの、なんだがな」
S-26区。逃げ惑う人々の中心に、二体の怪人、そして数十人の全身タイツを着た獣人達の姿があった。
一体はボアラバーを名乗る猪獣人の中年オヤジ。中年太りのせいというだけでは許されないだらしのない肥満体型をしており、黒の全身タイツにより濃い革製の黒のグローブとブーツ。そして組織ワルダークの紋章がでかでかと描かれた紫色のマントを身に着けていた。
もう一体は同じく中年の熊獣人。首から下を機械製のアーマーで覆っており、猪獣人程ではないが、アーマー越しでもかなり大柄な体型である事がわかる。
全身タイツを着た獣人達は、種族や体型はそれぞれ違うが、皆がボアラバーと同じ黒の全身タイツ、革製の黒のグローブとブーツを身に着けていた。しかし違う点もあり、ボアラバーのようにマントは羽織っておらず、腹部と背中にはそれぞれの識別番号であろう数字がプリントされている。そして最も大きく違う点は頭部だ。マズルと耳を除いた目までも覆う黒の全頭マスクにぴっちりと覆われており、目の部分には二次元的なニヤけた白い目、額には組織ワルダークを示す紋章がデザインされていた。
彼等こそ組織ワルダークが率いるワルダーク戦闘員、怪人にも従い幾度となくビーストレンジャーの前に立ちはだかった下っ端兵士達だ。
「別にいいだろ! 戦闘員はいつも俺様が作ってんだからよぉ。そんでシールドベアラー、お前さんは何でそんなにテンションが低いんだ。久々に外の空気が吸えんだぞ?」
「任務が命に替えてもアンタを守る事だからな。自由に暴れられねえし、どうせ今回の戦いで俺は終ぇだ。気分も下がるってもんだぜ」
シールドベアラーと呼ばれた熊獣人の怪人は、溜息を吐きながらそうボヤいた。ボアラバーは不機嫌な同期の様子に少し面倒臭そうな顔をしたが、すぐに興味が本来の目的へと移ったのか、ニヤリと邪悪な笑みを浮かべその視線を逃げ惑う一般市民へと移した。
「ま、俺様は自分のヤリたい事をするだけだ。まずはアイツから……♡」
ボアラバーはそう言ってガニ股になる。腕を上げて内側に曲げると、自身の頭を中心に丸のマークを作るよう両手の指先同士を合わせた。
「ワルダーク光線発射〜!!」
そんな間抜けなポーズを取りながらそう叫ぶと、作られた丸の形──腕の内側から野太く黒い光線が照射された。
びびびびび♡ と奇怪な音を上げながら、逃げ惑う豹獣人の青年の背中にソレは一直線に向かっていき、見事直撃してしまう。
「あああ゛あ゛ッ!?」
ボンッ♡ という間抜けな音と共に青年が黒い煙に包まれる。煙が晴れると、そこにはワルダーク戦闘員と同じ黒の全身タイツ姿になった元青年の姿があった。
「イ゛ィーッ!!」
青年の面影が残っているのはマスクから唯一覗くマズルと耳、そして尻の上からピンと伸びる豹柄の尻尾だけだ。
元青年の戦闘員は先程まで逃げ回っていた態度と打って変わってその場で姿勢正しく敬礼をすると、ボアラバーに向かって大きな奇声を上げた。
この所作は戦闘員が組織ワルダークに忠誠を誓い、怪人の命令を遂行する際に行われる。青年は、一瞬の内に組織ワルダークの忠実な下僕であるワルダーク戦闘員に変えられてしまったのだ。
「ガッハッハー! 俺様調子万全♡ さあ戦闘員共! 逃げ惑う獣人共を捕らえろ!」
「「「イ゛ィーッ!!」」」
ボアラバーの命令を受けた元青年含む戦闘員達は、素早く敬礼を行い奇声を上げると散り散りに駆け出した。
「さぁてお次は……♡」
ボアラバーが新たな標的を見定めようと逃げ惑う人々を値踏みするような目付きで見渡す。その時の事だった。
「させるか! とおりゃあああッ!」
ガギィイン!! と金属同士がぶつかり合うような衝撃音が響く。
「来たな、ビーストレンジャー!」
「何だこれ!? 硬……ッ光の壁!?」
現れたのはビーストブレイドを装備したビーストレッドであった。しかし、ボアラバーに振り下ろした炎を纏う剣撃は薄らと光る壁のような物で防がれてしまう。
「アンタの相手は俺だ、ビーストレッド」
シールドベアラーが手を伸ばすと、その周囲にボアラバーを守った物と似た──円盤状の光の壁が生成され、レッド目掛けて手裏剣のように飛んでいく。
「うおおッ!」
レッドは身軽な動きで全て躱した後、数歩引いて体勢を立て直そうとする。しかし、光の円盤の追撃は止まらない。ブーメランのように旋回すると、レッドの背中目掛けて空を斬り裂きながら急接近する。
「このッ!」
避ける事が可能な物は避けながら、回避先に迫る光る円盤にはビーストブレイドによる剣撃をお見舞いする。
すると、ボアラバーを守った防壁とは違い、光る円盤は比較的簡単に砕け散った。
地面を見ると、避けた円盤はコンクリートを斬り裂きその全長の半分程を沈めていた。
「危ねえ〜! 当たったらただじゃ済まねえな……!」
冷や汗をかきながらレッドは素早く構え直す。そして、ニヤリと口元に笑みを浮かべ口を開いた。
「だが分かったぞ、猪怪人を守った光の壁は厚さ重視の防御力特化の技。円盤の方は耐久力を捨ててうす〜くした代わりに切れ味に特化したって技ってとこだろ!」
「正解だぞお! 随分と察しが良いみたいだが、俺様は猪怪人なんて名前じゃなくボアラバー様だ! 覚えておけビーストレッド!」
「おい、勝手に正解などと言って俺の能力をバラすな。まだ考察の余地があったかもしれないだろうが」
意気揚々と名乗るボアラバーに対して、シールドベアラーは眉間に指を当てながら呆れたように返す。
しかし、ボアラバーは全く気にしている様子はない。
「ガッハッハ〜! 問題ないだろ、何せバレてもコイツの攻撃は俺様には届かない♡ 俺様を守るこの壁はシールドベアラーの怪人奥義、パーフェクトベアラー! ヒーローの攻撃を防ぎながら怪人の攻撃は通す! 攻守揃った完璧な陣形なんだからなぁ!」
「お前さん、口が軽いのも大概にしろよ……」
シールドベアラーのこめかみに血管が浮かび上がるが、やはりボアラバーはどこ吹く風だ。
同期からの叱責に何も返事をしないまま、ガニ股になって両腕で丸を作り、ワルダーク光線発射のポーズをとる。
「だからこそ、俺は好き勝手市民を戦闘員に変えられるっつーわけだあ♡」
「何?」
しかし向いた先はビーストレッドの方ではなく見当違いのまったく違う方向。
見れば、その先には戦闘員に捕らえられた一般市民の姿があった。
「な……ッ!? やめろ! ぐっ!?」
「言っただろう、お前さんの相手は俺だ」
市民を守りに行こうとするが、その鼻先をシールドベアラーの光の円盤が掠める。
「ワルダーク光線、発射ー!!」
そして隙ありといった調子で、ボアラバーは一般市民に向けて光線を放った。禍々しい黒い光を放ちながら、光線は市民へと直撃する……かのように思えた。
「どぉッせぇい!!」
建物の影から現れたビーストイエローが、その大柄な身体を丸め市民を捕らえる戦闘員にタックルをかました。
イエローの全体重を乗せた一撃に、戦闘員はひとたまりもなく真横に吹き飛んでしまう。
「イエロー!」
支えを失い倒れそうになった市民をイエローは抱えるとそのまま地面との間に入り込み緩衝材になった。真っ直ぐ進む光線は標的を見失い、そのまま壁に激突して消えてしまう。
「おのれビーストレンジャー……! 邪魔しおって〜! しかぁし! 連続で俺様の光線から獣人共を守れるかあ!?」
わなわなと怒りに打ち震えながらも、ボアラバーは再度ワルダーク光線発射のポーズをとる。見れば、散り散りになった戦闘員達が市民を捕らえて集結し、ボアラバーに向けて市民を捧げている。
「ワルダーク光線、発射発射発射発射ァ〜!!」
ボアラバーは逐一身体の向きを変え、四本のワルダーク光線を発射する。びびびびび♡ と奇怪な音を発しながら突き進む黒い光は、それぞれ四人の獣人に向かって突き進んでいく。
最も近くにいた獣人に向かってイエローは駆け出した。そして大槌を振り上げると、駆け出した方角とは別方向の市民と光線の間に勢い良く放り投げた。
稲妻を纏った大槌は地面を叩き割り、隆起した地面が市民を守る壁となった。イエロー本人は目の前の戦闘員に一撃をお見舞いし、市民を抱えて光線の範囲外から逃す事に成功する。
しかし、光線の危機に晒されている市民は後二人残っている。今度こそ光線が市民に直撃すると確信したボアラバーは邪悪な笑みを浮かべた。しかし。
「「イ゛ィーッ!?」」
「なあ……ッ!?」
何発かの銃撃音が鳴り響く。すると、戦闘員達は奇声を上げて悶え、その場に倒れ込んでしまった。支えを失った市民達もその場に倒れ込み、結果的にすんでのところで光線を避ける事に成功した。
「遅れてしまいましたが、僕も到着しましたよ! イエロー! レッド!」
「ブルー!」
「ブルー……! 助かったぞ」
レッドとイエローが歓声を上げる。ブルーはバイザーの位置を指で整えると、市民を捕らえる戦闘員達に銃口を向ける。
「レッドのデバイスを通じて敵の能力はわかりました。優先すべきは市民の皆さんの安全確保です! 次にボアラバーを守る厄介なシールド持ちのシールドベアラーを討ちましょう!」
その様子を見たシールドベアラーは、ブルーに向かって手をかざした。
「させるか……ヌおぉッ!?」
「自分で言った事忘れたのか? 戦う相手は俺なんだろ!」
レッドが斬りかかり、シールドベアラーのブルーに対する攻撃を防ぐ。
「助かります、レッド! そのまま足止めを!」
ブルーはそレッドに感謝すると、己が倒すべき戦闘員、そして救うべき市民達へと意識を集中させた。
初めて行う二人の怪人との戦闘。しかし幸運にも、状況はややビーストレンジャー側が優勢に立ち始めていた。
「ぐぬぬ……! 発射発射発射ァ〜!!」
負けじとボアラバーは光線を発射し続けるが、イエローによって市民を退避させられてしまう。イエローの手の届かない所はブルーが射撃でサポートして市民を救出する。
「アンタ、中々しつこいじゃねえか……!」
「こっちのセリフだ!」
シールドベアラーもボアラバーを援護しようとするが、全てレッドによって防がれる。稽古と怪人との戦いで磨き続けてきた剣筋と剣速は、多種多様な攻撃と防御手段を持つシールドベアラーを防戦一方に持ち込んでいた。
「ぐうぅ……!」
ボアラバーは歯噛みして悔しがる。間抜けな言動から勘違いをしそうになるが、ボアラバーの能力とその速射、連射性能はかなりの脅威だ。ブルーとイエローは油断せず全力で異能力を使い、ボアラバーの光線から市民を守り少しづつ戦闘員という戦力を削っていく。
このままではジリ貧だと焦りを覚えたのか、ボアラバーは足りない頭を回転させ、別の攻撃手段に出た。
「なら、こっちに発射ァ〜!」
「しまっ……! レッド!」
ボアラバーは身を翻すと、今度はレッドに向けてワルダーク光線を放った。市民の救助を優先していたブルーとイエロー、そしてシールドベアラーとの戦闘に意識を割いていたレッドは不意を突かれて反応できない。
「やべ……」
今度こそ光線が直撃する。何度目かの正直にボアラバー、そしてシールドベアラーは笑みを浮かべた。──しかし。
「待たせたな」
グンッ! と強い力でレッドの身体が持ち上がる。瞬きをする間に、レッドの身体は光線から遥か離れた場所へと運ばれていた。
「ムギィ〜ッ!!」
「出やがったな……!」
ボアラバーが地団駄を踏み、シールドベアラーは明らかに警戒の色を強める。
聞く者を安心させるバリトンボイス。貫禄のある巨体を覆う白を基調に黄色いラインが入ったヒーロースーツ。丸太のように太い手足に身に着けた黒のグローブとブーツ。装着したバイザー光らせ、レッドを救ったバーニーズマウンテンドッグ獣人は。
「師匠〜!!」
「お前達良くやった。レッド、共に奴を倒すぞ」
ビーストレンジャーの師匠。ヒーロービーストシルバーであった。
これで人数比は四体二。それも、かなりの手練であるシルバーの登場によって、怪人側は絶望的なまでの劣勢に立たされた。
「おい! 流石に早すぎるだろ! エクスプロブスターはどうしたんだエクスプロブスターは!」
「まあ、この調子だともうやられているんだろうな」
「クソー! 結局一人しか戦闘員にできてねえじゃねえか!」
ボアラバーの言葉に、善良な市民を救えなかった事実が彼等の正義の心に重くのしかかる。
レッドに至っては、遠くで市民が戦闘員に変えられる瞬間を目撃していたのだ。
「ワルダークの怪人め、絶対に許さねえからな!」
しかし嘆いてばかりではいられない。それでも今己が出せる全力で、これ以上の犠牲者が出ないように努めるのがヒーローという在り方なのだから。
レッドとシルバーは一瞬だけ目配せをすると、手慣れた動きで、左右から同時にシールドベアラーに向かって攻撃を仕掛ける。
「チ……ッ!!」
シールドベアラーは身体の周りに複数のシールドを展開しながら後方に跳ぶ。そこから更にシルバーに向けて三重のシールドを張り、レッドに対して光る円盤を飛ばした。
しかし、シルバーの右ストレートによって三重のシールドは砕け散り、シールドベアラーの周囲に展開するシールドすら貫通しながら横腹に拳が撃ち込まれる。
「ぐ……ッ!!」
幾重にも重ねた防御で威力は大分削がれているがいるがその一撃は重い。シールドベアラーはよろめき体勢を立て直そうとするが、光る円盤を避けたレッドが追撃を加えようと接近してきた。
「させるか! 発射ァ〜!!」
「うおッ!」
それを防ごうとボアラバーが光線を発射するが、レッドは宙に跳び紙一重で光線を躱した。
ビーストレンジャー側も油断は決してできない、が、着実に怪人側の戦力を削る事に成功している。
「発射! 発射! 発射! 発射!」
ボアラバーは不意を突こうと手当り次第に光線を放つが、それ等は全て虚しく空を切った。的の大きいビーストシルバーにも掠りさえしない。
「おっさんの癖にちょこまかとぉ〜!!」
「これでも鍛えているのでな」
ボアラバーからの攻撃をいなしながら、稽古で鍛えたレッドとの連携攻撃をシールドベアラーに浴びせていく。
(しかし、何かが妙だな)
確かにボアラバーの一発アウトの光線を避けながら、防御力の高いシールドベアラーを削りきるのは骨が折れる。だが、それでもかなりの戦力差がある今、そこまで絶望の表情を浮かべていないシールドベアラーに対して、シルバーは何かを感じ取った。
「貴様、何か企んでいるな?」
シルバーはレッドと共に猛攻を加えながらシールドベアラーに問いかけた。しかし、着実にダメージを受けながらもシールドベアラーは意味深な笑みを浮かべるだけだ。
(獣装奥義を使うか──しかし……この状況で大技を使って隙を晒すのは……)
シルバーの頭の奥で何かが引っかかっていた。シールドベアラーの余裕。一人しか戦闘員にできていないという何処か楽観的な、まだ自分に未来があるかのような言い回し。
(やはり早期決着をつけるべきか──)
シルバーが右拳に力を込め、獣装奥義発動の準備をする。その瞬間であった。
「貯まった……! 行くぞボアラバー! 怪人奥義──パーフェクトベアラー!」
シールドベアラーが両腕を上にかざしそう叫ぶと、辺り一面が光に包まれた。そして、レッド、ブルー、イエロー、シルバーの周囲を光る壁が取り囲んだ。
「シールド!? 時間稼ぎのつもりか!」
ビーストレンジャー三人は動揺するも、この怪人奥義はシールドベアラー苦し紛れの抵抗程度にしか思っていなかった。
しかし、ビーストシルバーだけが怪人達の思惑をいち早く察知する。
「……いかんッ! お前達、今すぐこの壁を壊せ!」
シルバーの緊迫した声が辺り一面に響き渡る。ビーストレンジャーの三人は言う通りに壁を壊そうとするが、シールドベアラーの奥義はビクともしない。
「ぜはーッ! ぜ……ッ、ボアラバー、早く……」
「ガッハッハ〜ッ♡ ナイスだシールドベアラー!」
ボアラバーがワルダーク光線発射のポーズをとる。その瞬間、レッド、ブルー、イエローもようやく敵の意図に気付いた。
怪人の攻撃のみを通す奥義──それでヒーロー達を身動きができないように囲ってしまえば、一方的にヒーローを戦闘員にする事が可能なのだ。
「させんぞ……ッ! 獣装奥義!」
シルバーの拳、そしてそれに装着されたブラスナックルが激しい閃光に包まれる。その光は、先日蝙蝠怪人に対して見せた数十倍もの輝きを放つ。
ビーストシルバーの全身から能力によるエネルギーが放出され、力を込めて踏み抜かれた地面に亀裂が走る。
「発射発射発射発射〜ッ!!!」
「ビーストナックル──フィフス!!」
ボアラバーが四本の光線をビーストレンジャー全員に放った。同時に、シルバーが前方の壁に向かって渾身の右ストレートを放つ。
「ヌ、ウ゛ウンッ!!!」
とてつもない轟音が鳴り響く。そしてなんと、あれ程強固だったシールドベアラーの奥義をシルバーは一撃で砕き割ってしまった。
「な……ッ!?」
シールドベアラーが大技を使った反動で息絶え絶えになりながら、驚きで目を開く。
だが、シルバーの獣装奥義はまだ終わらない。地面を踏み抜き、レッドの元へと急接近するともう一撃を放つ。
「うあ……ッ!」
砕けて空いた穴に野太い腕を差し込むと、素早くレッドをの腕を掴んで外側へと放りなげた。そして、イエローの元へたった一蹴りで跳躍すると、地面を踏み込み、再び強烈な一撃を放つ。
「ヌ、ウ゛……ッ!」
しかし、今度は大きな亀裂が入るだけでシールドベアラーの奥義が砕き割れる事はなかった。
(出力が足りん……ッ! やはりワシももう歳か……ッ!)
残るビーストナックルの攻撃回数は二回。それを撃ち終えると反動で大きな隙を晒してしまう事になる。
ビーストシルバーは眉間に汗を滲ませながら、残った勢いを利用して身体を左回転させると、その重い体重を乗せた回し蹴りを繰り出した。そこでようやく光の壁は粉砕でき、そのまま驚いた様子のイエローを引きずり出す。
(後は……ッ!)
残ったブルーに視線を移すと、シルバーの眉間に皺が寄った。力強く地を蹴りブルーの元へと駆け出すが、光線はブルーの目の前にまで迫っている。
最低でも二撃入れなければシールドベアラーの奥義は破れない。しかし、二撃入れる隙もあるかどうか。
(覚悟を決めるしかあるまい──!)
ビーストシルバーはブルーと光線の間に割り込んだ。そして、全身全霊の一撃を撃ち込む。
バギイイイッ!!! と亀裂が走るような音が鳴り響く。だがやはり、シールドベアラーの奥義は壊れない。
「お前達、後は頼んだぞ……ッ!!」
右腕を後ろに引きながら、シルバーはビーストレンジャー三人に向けてそう言葉を放った。そして、五回目のビーストナックルが炸裂したその瞬間、漆黒のワルダーク光線はシルバーに直撃した。
「ぬお゛おおおッ!?!?」
びびびびびび♡ と奇怪な音を立ててシルバーの巨体が黒い光に覆われる。
そして、ボンッ♡ という間抜けな音と共に、シルバーの身体は黒煙に包まれた。
「……ッ!!」
辺りに静寂が包まれる。黒い煙が晴れていき、ぼやけたて浮かび上がった巨体のシルエットが鮮明に映し出されていく。
そして現れたのは白いヒーロースーツに身を包んだ頼れる師匠、ヒーロービーストシルバーの姿──では無く、黒の全身タイツに覆われた悪の手先、ワルダーク戦闘員の姿をしたバーニーズマウンテンドッグ獣人の姿だった。
「そんな……」
ブルーを取り囲う光の壁にビシビシと亀裂が広がり、砕け始める。光の壁が崩壊し、間を遮る物がなくなったブルーの瞳に変わり果てたビーストシルバーの姿が鮮明に映った。
鍛えてはいるものの歳には敵わず肉付いてしまったその身体には、薄い生地でできた黒の全身タイツがぴったりと吸い付き、ヒーロースーツよりもそのだらしなさを強調させている。
正義を体現してきたその崇高な肉体──その腹部と背中には、無情にもワルダーク戦闘員としての識別番号351の数字が刻まれていた。
数々の怪人を逃がさない為、人々を危機から救い出す為にその体重を支え駆け続けた野太い両足が敬意を示す為にぴっちりと揃えられる。数々の怪人を討ち人々を守ってきた逞しい左腕が、無抵抗の意を表す為に腰にぴったりと付けられる。先程まで怪人と戦い、レッド、イエロー、ブルーを敵の攻撃から救い出した右腕は、組織ワルダーク忠誠を示す為に指を揃えて額の前に持っていく。
趣味の悪いワルダークの紋章、二次元的なニヤケ目をデザインしたマスクから覗く口が開いた。恐怖に怯える市民を安心させ、ビーストレンジャーを導いてきた声で、ビーストシルバーは。
「イ゛ィーッ!!」
悪の組織ワルダークに忠誠を誓い、怪人の命令に従う際に上げる奇声を発するのだった。
「師匠……ッ」
「ガーハッハ〜ッ! さあ351号、ビーストシルバーのしての貴様の実力で、ビーストレンジャー共をその手にかけるのだ!」
ボアラバーが心底楽しそうに笑い声を上げ、ワルダーク戦闘員となったビーストシルバーに命令を下す。ビーストレンジャー達は表情が絶望の色に染めながら、変わり果てた尊敬する師匠の動向をただじっと見つめて立ち止まっていた。
ボアラバーの命令を受けた元ビーストシルバー──戦闘員351号は再度姿勢を正すと口を開いた。そして。
「イ゛ぃ……っ! ぐ……ッ」
しかし、その口から放たれたのは何処か苦しげで、呻きが混じるような声だった。
その様子を見て、レッドの瞳に光が灯り口を開く。
「そうだ……師匠がこんな怪人に簡単に操られる訳が無い……! まだ怪人の能力に抵抗してるんだ!」
「なら、さっさとあの怪人を倒せば師匠を助けられるかもしれないって事だな」
「ッ、すみません……ッ、僕に力がないばかりに、でも、ここでくよくよしている訳にはいきません!」
まだ絶望に伏せる時ではないと、イエロー、ブルーもその瞳に希望の光を宿し、シールドベアラーに視線を向ける。
勢いを取り戻した三人を見たシールドベアラーは苦々し気に唾を吐き捨てると、両腕を上げて怪人奥義発動の準備に入った。
「させるか! ブルー! イエロー! 行くぞ!」
ブルーとイエローが駆け出し、レッドの元へ集う。
「クソ……ッ! ボアラバー! ぜーっ……、早く、ゲホッ、ソイツを手懐けろ!」
「そんな事言われても抵抗されるなんて初めてだからなあ……おい、戦闘員共、351号をこっちに連れて来い!」
市民達の解放が終わった今、最優先事項はボアラバーへの攻撃を防ぐシールドベアラーの討伐だ。
レッド、ブルー、イエローの三人が集い、それぞれが取り出したヒーローデバイス──ビーストブレイドにビーストガン、ビーストハンマーを合わせると、それぞれが変形して組み合わさり、大きな銃身へと姿を変える。
「ぐう……怪人奥義──パーフェクトベアラー!」
「俺様も手伝うぞお! 怪人奥義──ボアラバスター!!」
シールドベアラーの正面に、消耗故か所々ひび割れた不完全な光の壁が出現する。そして、その間に立ちはだかるかのように、ボアラバーからワルダーク光線の大きさを超える漆黒の光線が放たれた。
ボアラバーの怪人奥義ボアラバスターは、地面を抉りながらビーストレンジャーの元へ突き進んでいく。恐らく洗○能力をある程度犠牲にする代わりに攻撃力に特化したボアラバーの大技なのだろう。
しかし、二体の怪人から繰り出された怪人奥義にビーストレンジャーは怯む事なく、大きな銃身の引き金を引いた。
「「「獣装合体! 奥義──ビーストマグナム!」」」
掛け声と共に轟音が鳴り響き、巨大な銃口から光る弾丸が発射される。
光る弾丸はボアラバスターと真正面からぶつかり合い、それを起点にとてつもない爆風が巻き起こった。
「ぐ……ッ! 負けて、たまるかぁあ!!」
ビーストレンジャーが銃身に強くエネルギーを込めると、光る弾丸は更に巨大化する。
大きくなったソレは瞬く間にボアラバスターの漆黒の光を飲み込み、シールドベアラーの元へと突き進んでいく。
「ぐ、う……ッ」
主を守ろうとした不完全なパーフェクトベアラーも、光る弾丸に触れた瞬間跡形もなく消し飛んでしまう。そのまま光は熊獣人の怪人、シールドベアラーを飲み込み。そして。
「グッ! ガアアアアアアアッ!!!」
ドゴオオオオン……!!! という轟音、そして断末魔と共にシールドベアラーのいた場所は爆発し、辺り一面が眩い閃光に覆われた。
「う……ッ、皆、無事か……?」
「ええ、ですが少し力を使いすぎてしまいました……」
「……師匠はどうなった?」
ビーストマグナムの銃身を壁にして爆風を防ぎながら、三人は互いの、そして尊敬する師の無事を確認しようとする。
しかし、舞い上がる土煙のせいですぐに確認をする事ができない。
「師匠! どこだ!?」
ボアラバーの追撃を警戒しながら辺り一面を捜索する。すると、徐々に煙が晴れようやく視界が開き始めた。
「ああ……!?」
「ガッハッハ〜! やはりとんでもない強さだなビーストレンジャー。だが、お前達の大好きな師匠はもうここにいるぞお♡」
シールドベアラーが遺したシールドの中。ボアラバーと戦闘員に囲まれ、ビーストシルバーは休めの格好で拘束されていた。
恐らくこの戦闘員達はこのシールドを盾にするようにして、爆風の反対方向からやって来たのだろう。怪人の攻撃を通すシールド。それはつまり、組織ワルダークの一員と判定された物を自由に通すことができるということ。
だからこそシルバーも含めた戦闘員達はこの光る壁の中に入る事ができたのだろう。
「ふッ、ぐ……!」
「ムフフ♡ 後はこの壁の中でじっくりコイツを躾けてやるだけだあ♡」
「お前……! 師匠から離れろ! 皆、もう一度ビーストマグナムを使うぞ!」
ブルーとイエローが頷き、再びビーストマグナムに手を掛ける。しかし、銃身が淡い光を発するだけで、その銃口から弾丸が発射されることは無かった。
「な、何で……!」
「……僕達は想像より力を使いすぎました。もう少し回復を待たなければ、二射目は……」
「何だよそれ……! 早く、早くしないと師匠が……!」
レッドが両手に力を込め、必死にエネルギーを送ろうとする。少しだけ銃身の輝きが増したものの、二射目を撃つエネルギー量にはまだ程遠いようだ。
「ガッハッハ♡ ガス欠かあ♡ こいつぁラッキーだな♡ 俺様ももうほとんど力は残ってないが、このおっさんを堕とすにはこれだけで充分だあ♡」
「あぐ……ッ!」
ボアラバーが後ろから手を伸ばし、厭らしい指使いでシルバーの胸の上を這わせると、小山の頂点、ぷっくりと浮かび上がった乳首を押し潰した。
「お前、何をしてるんだ! 師匠から離れろと言ってるだろ!」
「アア? お前さん達、もしかして俺様が何してるかわかんないのかあ?」
「……ッ」
ビーストレンジャーは怒りを露わにしながらも、ボアラバーが何を言っているかわからないといった様子で押し黙る。
それを察したボアラバーは酷く愉快そうな笑みを浮かべると大きな牙を蓄えた口を動かして語り始めた。
「んじゃ俺様が全部丁寧に教えてやるよ♡ 良かったなシルバー♡ 最後にお前さんの身体で愛する弟子たちに性教育ができるぞお♡」
「うぐ……ッ、やめ、ろ……ッ。お前達、見るな……ッ!」
巨体を覆う黒い全身タイツの上を這うボアラバーの手付きに悶えながら、シルバーはビーストレンジャーに懇願する。
その様子をビーストレンジャー達は動揺しながら見つめる。何故あれだけ屈強な肉体を持つ師匠が、ただボアラバーに触られているだけで苦しそうにしているのだろうと。
「お前達は俺様の作る戦闘員にオトナの雄しかいないのに気付いてたか?」
「……知らない」
回復を待ちながら、レッドはボアラバーの問いに答える。ブルーはその顔付きを見るに気付いてはいたようだが、その理由にまで思考は及んでいなかったようだ。
「俺様はな、オトナの雄だけが持つ性欲を利用して戦闘員共を操ってるんだあ♡ ……ああ、性欲もわかんねえかあ♡ 性欲ってのは、ちんちんをイジイジして気持ち良くなって、白いおしっこを出したいっつー男の本能の事だよ♡」
「え……?」
ボアラバーの口から出る突然の下ネタに、レッドとブルーの口から素っ頓狂な声が漏れる。イエローは幼いながらに何かを察しているのか、ビーストマグナムに力を込めながらボアラバーを見据えている。
「何を言ってるんですか貴方は。師匠がそんな下品な事をしたいと思うはずが……」
「いいや♡ オトナの雄は皆そうだ♡ ちんぽ弄るのが嫌いな奴はいねえ♡ お前さん達が大好きな師匠も、偉そうな事を言っている裏で情けない面晒しながら、ちんちんいじいじしてネバネバの白いおしっこどぴゅどぴゅ出してんだよ♡」
「ぐ……ッ、ボアラバー、口を閉じろ……ッ。お前達、聞くな……ッ頼む……ッ」
何かまだ知ってはならない、イケナイ事を聞いている。尊敬する師匠の言葉からもその感覚は間違いではないとわかっている。しかし、ボアラバーの言葉を無視する事ができない。
「気持ち良くなる為に必要なのは何もちんぽを弄る事だけじゃねえ。こうやって、乳首をじっくりねっとり弄ってやるとぉ……♡」
「ぬう゛、う……ッ」
芋虫のようなボアラバーの指が、ビーストシルバーの乳首の上を掠める。しかし、幼い弟子達の手前、師としての、大人としての、ヒーローとしてのプライドからか、決して情けない声を上げようとしない。
「強情だなあ♡ 仕方ねえちょこっとだけ……♡ ワルダーク光線発射ッ♡」
「ほお゛……ッ!?♡ お゛……ッ♡」
ずむッ♡ と太い指がビーストシルバーの乳首を押し潰すと、その先端からか弱いワルダーク光線が発射される。びびびびび♡ と間抜けな音を発する光線は微弱な振動となって、ビーストシルバーの肉体を、心を徐々に蝕んでいく。
「ガッハッハ〜♡ こんな風に俺様みたいな男に触られても気持ち良くなっちまうわけだあ♡」
「き、さま……ッ♡ うお゛ォ……ッ♡」
歯を食いしばり耐えようとするビーストシルバーを嘲笑うかのように、ボアラバーはそのピンッ♡ と勃った乳首を抓り上げる。
「もいっちょ発射♡」
「んお゛ォおお゛……ッ♡♡」
乳首を引き伸ばしながら、その根元に向かってびびびびび♡ と微弱なワルダーク光線を発射する。
快楽が乳首を通じて全身を走る度に、シルバーの頭に組織ワルダークにとって都合の良い新たな価値観が植え込まれていく。
「どうだ? 気持ち良さそうだろ? 見ろ、ちんぽもこんなに大きくなっちまって♡」
ビーストシルバーの股間を見れば、先端にくっきりと亀頭の形を浮かび上がらせたテントが張っていた。
見た事もないちんぽの形に、そして膨張したその大きさに、ビーストレンジャー達はいけないと分かっていながらも目が釘付けになってしまう。
「あれが師匠のちんぽ……」
ゴクリと喉を鳴らし、イエローが低い声で呟いた。その言葉がビーストレンジャー達の頭の中に反芻する。
そうだ、あの頼れる師匠が戦闘員の格好へと変えられ、中年の猪怪人に弄られちんぽを大きくしている。それが決定的な事実となって、三人の中に感じた事の無い感情を芽生えさせる。
「そうだ♡ オトナの雄はなあ♡ 気持ち良くなるとこうしてちんちんをおっきくしちまうんだ♡ そんで……♡」
「む゛ッ♡ オ゛ォお……ッ♡」
「こうやって気持ち良くなったちんぽシコシコ扱いてやるだけで♡ どれだけ鍛えて筋肉付けようが、どれだけデカくて屈強だろうが♡ 全部関係無しにビクビクデケえ身体震わせて悦んじまうんだよ♡」
強面の仏頂面が、内面の世話焼きで優しい所を知らなければ近寄りがたかった怖い顔が、ボアラバーの手によって黒の全頭マスクで覆われている。
真一文字に閉じられ中々が口角が上がることが無かった口が、ボアラバーの指使いに翻弄され、浅い呼吸を繰り返し、普段の師匠からは決して聞く事の無い淫らな喘ぎ声を上げている。
普段の師匠の姿がボアラバーによって変えられていく。ボアラバーによって、決して周りに見せなかった雄としての本性を晒されていく。
「本来勃起は抑制して管理しやすいようにするんだがなあ♡ 今だけは快感を刻み込む為に特別に許してやる♡ ムフフ♡ もいっちょ発射〜♡」
「イ゛ッ♡ ぎい゛ぃ……ッッ♡♡」
情けなく腰を突き出し、握られたちんぽをビクビクと脈打たせながらその巨体を痙攣させる。
輪っかを作った指を前後に動かせば、雄の本能からかより快楽を享受しようと腰が前後に動く。乳首をコリコリと爪で引っ掻いてやれば、鼻息を荒くしながら身を捩り、大きく膨らんだ腹が激しく上下する。
見せないようにしていた醜態が隠せなくなっていく。ボアラバーの手付きによって、中年の熟れた肉体が快楽に支配されていく。
「や、やめろ……ッ!」
もう耐えられないといった様子でレッドが立ち上がった。何も出来ないもどかしさと、敬愛する師が悪の怪人の手によって変えられていく恐怖。それらが生まれてから今日初めて覚えた感情と綯い交ぜになるのを感じながら、レッドはビーストブレイドを持って光る壁に斬りかかった。
「無駄無駄〜♡ お前さん達お得意のビーストマグナムじゃねえと壊れねえよ♡ だが可哀想にな♡ この調子じゃ次に撃てる頃には、お前さん達の大好きな師匠は俺のモンだ♡ 乳首とちんぽに同時発射〜ッ♡」
「イ゛ィ〜ッ!?♡♡ イ゛……ッ♡」
人並みの精神力では一瞬で戦闘員へと堕とされてしまうワルダーク光線を幾度となく浴びせられ、ビーストシルバーの頑固で堅苦しくも、真っ直ぐな正義を掲げる崇高な精神が歪められていく。
ワルダーク光線を浴びるのは気持ちが良い。ワルダーク戦闘員へと変えられるのは気持ちが良い。ワルダーク戦闘員になるのは気持ち良いと。
「気持ち良いだろう♡ イきたいかあ? ビーストシルバー♡」
「ッ♡ そんなはずがあるか……ッ♡ そ、その醜悪な口を閉じろ、ボアラバー……ッ♡」
前代未聞の量の光線を浴びながらも、ビーストシルバーはボアラバーの言葉を跳ね返した。
その強情さと怒りの滲んだ声は、確かにビーストレンジャーが敬う師匠その人の物だ。
しかし、口では抵抗しながらも鼻息は荒く、フッ♡ ほッ♡ と下品な呼吸を繰り返しながら身を捩り、ヘコヘコと腰を僅かに前後に振ってしまっている。
「コイツらみたいに、俺様の命令に従うのが生き甲斐の変態マゾ戦闘員になりたいだろお?♡」
「誰が……ッ! お前の様な悪に生きる男の手下になぞなるかッ♡」
「強情な奴だなあ♡ ワルダーク光線発射ッ♡」
「ヌ゛お゛ぉオ゛……ッ♡♡」
必死に絞り出した抵抗の言葉も、ワルダーク光線によって上書きされビーストシルバーから引き剥がされていく。
白く明滅する視界に、必死にシールドに斬りかかるレッドが、エネルギーを貯めるブルーとイエローの姿が映った。
愛する弟子達の勇姿を見て、ビーストシルバーは何度でも師として、ヒーローとして正義の意志を固めようとする。
しかし、ボアラバーはビーストシルバーの耳元で囁き続け、自分のモノへ貶めようとする。
「素直になれビーストシルバー♡ 俺様の言う事を全て受け入れろ♡ 俺様の言う事は全て正しい♡ 俺様の言うことは絶対なんだ♡」
「お゛……ッ♡ た、正しくなどぉ……ッ♡♡」
必死にボアラバーの言葉を、洗○を跳ね返そうとする。しかし、乳首を弄られ、ちんぽを弄られ快感に悶えるその身体が、ボアラバーの言葉が確かに正しいのだと受け入れていく。
「本当はこのままイきたくて堪らない♡ だがビーストシルバーとしてのヒーローの心がその邪魔をする♡ 本当はビーストシルバーなんてどうでもいい♡ 好きなように快楽を貪り支配される、ワルダーク戦闘員になりたいんだあ♡」
「イ、きたくなど……ッ♡ わ、ワシは、ワルダーク戦闘員に……ッ♡」
少しずつ、少しずつ。ボアラバーの言葉が真実としてその身心に染み込んでいく。
オトナの雄としての本能を利用され、ボアラバーにとって都合の良い存在へと変質させられていく。
「ワルダーク戦闘員になりたい♡ 組織ワルダークの、ワシの下僕になりたい♡ ワシに支配されながら、ワシに命令通りに動く下僕になりたい♡」
「ほお゛ォ……ッ♡ ボアラバーの、下僕……ッ♡」
びびびびび♡ と微弱なワルダーク光線を流され続け、ビーストシルバーの意識は深い闇へと堕ちていく。
ボアラバーに触られる乳首とちんぽに感覚が集中し、その快楽とボアラバーの言葉しか考えられなくなっていく。
そして、快楽を跳ね除けようと意識を割けば、ボアラバーの言葉に侵される。ボアラバーの言葉に抵抗しようと意識を割けば、快楽に溺れてしまう。
「さあ♡ もう一度聞いてやる♡ イきたいか? ワシの手で無様に射精して、ワルダーク戦闘員になりたいか?♡ 答えろ♡ これはこのボアラバー様直々に下す命令だ♡」
ボアラバーに囁かれる度、ビーストシルバーの鼓動が高鳴る。
しかし、それでもビーストシルバーは抵抗を続けようとする。
(このワシがこの悪を前にして、イきたいなどと思うはずがないだろうッ♡)
今までと同じように、ヒーローとしての意志をボアラバーに突きつけ、誘惑を纏った言葉を振り払おうとする。
しかし。
「イ゛っ、イ゛ぃイ゛きたい……っ♡ あ゛ぁ……ッ?♡」
度重なる責め苦の中。ビーストシルバーの口から漏れたのは射精がしたいという願望であった。それは正義のヒーローとして、決して悪に向かって言ってはならない言葉。
しかし、無理やり増幅させられた性欲が、ビーストシルバーの心を溶かすワルダーク光線が、その邪な言葉を──ビーストシルバーの奥底に秘めた本音を引き出してしまった。
それを聞いたボアラバーはニヤリと邪悪な笑みを浮かべ、続けて問いかける。
「ワシの手で無様に射精したいか?♡」
「お゛ッ♡ し、射精したい゛い……♡ ち、違うう♡ 今すぐボアラバーの手で、ちんぽから精液を出したい゛ぃ……♡」
一度自分の口から放ってしまえば、次々と雄の本能に忠実な本音が漏れ出していく。その言葉はボアラバーの手で掬い盗られ、新たな欲求でビーストシルバーの心を上書きする手助けをしてしまう。
「ちんぽから気持ち良〜く精液出して、その代償に俺様の下僕、ワルダーク戦闘員になりたいか?♡」
「お゛ォお……ッ♡ 気持ち良くなりたい♡ 出したい……ッ♡ なりたい……♡ ワルダーク戦闘員にい゛ぃ……♡」
鼻の穴を大きく開いて、フンフンと息を荒らげながらビーストシルバーはそう答えた。
その様に普段の師匠としての、熟練のヒーロービーストシルバーとしての威厳は残っていない。ボアラバーが言っていた通り性欲に支配されたオトナの雄その物だった。
「よく言った♡ んじゃ射精許可をくれてやる♡ 戦闘員として忠誠を示しながら、ヒーロー時代の名残りのザーメンは全部ぶっぱなしちまえ♡」
「イ゛ぃッ♡ イ゛ッ♡♡」
シコシコシコシコ♡ とちんぽを上下に扱き上げられながら、ビーストシルバーは既に戦闘員になってしまったかのような声を口から漏らした。
壁の向こうからレッドの、愛する弟子の訴える声が聞こえる。しかしそれはまるで何処か遠くの他人がぼやいているかのようで、ビーストシルバーの心にはもう響かない。
(い、いかん♡ このままでは……ッ♡ し、しかしぃ……♡)
まだ後戻りはできるはずだというのに、オトナの雄としての性欲に支配されたビーストシルバーは、目の前にぶら下げられた射精というなの餌に夢中になってしまう。
「イ゛ッ♡ イ゛ぃッ♡ イ゛ッ♡」
ボアラバーのちんぽを扱くスピードが早くなる。着実に射精へと向かいながら、バーニーズマウンテンドッグ獣人特有のマズルから舌をだらしなく垂らし、浅ましい呼吸を繰り返す。
(で、出るッ♡ 出てしまう……♡ ワシの大事な物と一緒に……♡ 弟子達の前で、ワルダークの戦闘員の格好をしながら、ワルダーク式の敬礼でボアラバーに忠誠を誓いながら……ッ♡)
その光景を想像すると、ゾクゾクと肉付いた背筋に快感が走る。
それはボアラバーによって刻み込まれた歪な癖なのか。それとも、頑固で生真面目に生きてきた裏で芽生えた、決して満たされる事のなかった秘められた欲求なのかは知る由もない。
確実なのは、背徳感をスパイスにする事でビーストシルバーの肉棒がドクドクと脈打っている事だけだ。
(イ゛くッ♡ イ゛ってしまう♡ い、一度きりの射精♡ ボアラバーの手によるたった一度きりの射精で、ワシの全てが終わってしまうう゛♡)
ビーストシルバーの半生が走馬灯のように蘇る。組織ワルダークの存在を知り、ヒーローとして孤独に悪と戦う中、熊渡司令と出会った。ビーストレンジャーを結成し、三人の若者達に未来へ繋ぐ希望の光を見出した。共に修行し、戦い、時に厳しく接しながらも、三人に対して平等に愛情を注いだ。
三人のヒーローはビーストシルバーの想いに真摯に応えて共に戦い、師として敬ってくれた。
その全てが、雄の本能に屈した事によるたった一度の射精で上書きされ。台無しにされてしまう。
「さあ、イっちまえビーストシルバー♡ そして……♡」
そんな事はあってはならないはずだというのに、ビーストシルバーの身体は射精の準備を始める。
ゼンタイ越しに蠢いていた玉袋がキュウウウ♡ と持ち上がって、精液を肉竿の先端に向けて押し出す。何日も放出せず貯めに貯めた濃厚な子種汁は精管を通って尿道をせり上っていく。
気持ち良く精液を放出する為に、ボアラバーが指で作った輪っかを通ったちんぽをズイ♡ と突き出し、愛する弟子達に醜い大人の勃起ちんぽを晒け出す。
ボアラバーの指示に従うため、太い足をぴっちりと揃える。左手を腰に付け、右手指を額の前で揃えるワルダーク戦闘員式敬礼のポーズをとった。亀頭がぷっくりと膨れ上がり、鈴口が開く。そして。
「完全なワルダーク戦闘員になっちまえッ♡」
「〜〜〜ッ♡♡ イ゛ィイ゛ーーーーッッッ♡♡♡♡ イ゛ッ♡♡ イ゛ィッ♡♡♡」
びゅるッッ♡♡♡ びゅるるるッ♡♡♡ びゅ〜〜〜〜〜〜〜〜ッッ♡♡♡ びゅッ♡♡♡ びゅるるるるッ♡♡♡
と、黒タイツに覆われたちんぽの先端から黄ばんだ白濁液が噴出した。
ドプッ♡ ドプッ♡ ドプッ♡ と噴き出す重さを感じさせる精液は、シールドベアラーの遺したシールドに“組織ワルダークの一員側”という判定を受け、シールドを通過し目の前に立っていたレッドにかかり白く汚していく。
「ああ……」
動揺したレッドが後退り、尻餅を着く。その様子を見ながら、ビーストシルバーはまだ続く久方振りの射精の快感に酔いしれていた。
(イ゛ィ〜〜……ッ♡♡ イ゛ってしまっている……ッ♡♡ 全部出てる……ッ♡♡ ワシのヒーローザーメン……ッ♡ ボアラバーに全部搾り取られてしまっているう゛……♡♡)
ビーストシルバーはその心の何処かで、一度きりの射精なら洗○に耐えられるかもしれないという、射精を行う為の情けない言い訳と淡い希望を抱いていた。
(入ってくる……♡♡ ボアラバーの意思が……♡ ワルダーク戦闘員としての使命が……♡ ワシの中に入って……♡ 全部、塗り替えられてイク……♡♡)
しかし、それは甘い考えだと射精しながら悟った。快楽によって無防備になった頭に、スムーズにボアラバーの能力が、ワルダーク戦闘員としてのルールが刻み込まれていく。
古臭いヒーローとしての考えを上書きし、悪の組織、ワルダークに従う尖兵としての新しい価値観にアップデートされていく。
ワルダーク戦闘員になるのは気持ち良い。ワルダーク戦闘員として管理されるのは気持ちが良い。己を管理する組織ワルダークは素晴らしい存在。その総統、そして部下である怪人達は偉大なる存在。その命令に従い悪事を働くのは誇らしい事なのだと。
「ほお゛……ッ♡ ほ……ッ♡♡」
ビーストシルバーの思考の上書きが完了する度に、びゅるッ♡♡ びゅるるッ♡♡ と鈴口から断続的に精液が噴き上がる。
その様子をビーストレンジャーは絶望的な表情で眺めていた。
(……師匠が……あんなに気持ち良さそうにしながら、ちんちんから白い液体をたくさん出して……)
全てはボアラバーの言う通りだった。そして本当に全てが真実なら、気持ち良く吐精を行うビーストシルバーは完全に戦闘員に堕ちたという事になる。
しかし、この絶望的な光景を目にしても尚、ビーストレンジャー達はその事実を認める事ができなかった。
「お゛……ッ♡ イ゛、イ゛ぃ〜……♡」
快楽でガクガクの足を震わせながら、ビーストシルバーはようやくその長い射精を終えた。ボアラバーはそれを見届けると、ニヤリと楽しそうに笑みを浮かべビーストシルバーから手を離す。
脱力し完全にボアラバーに体重を預けていたビーストシルバーは、そのままその場に尻餅を着いてしまった。
「ガーハッハァ〜♡ お前達の師匠はもう終わりだあ♡ ワルダーク戦闘員としての最初の射精は何者にも変え難い絶大な快楽と共に行われる♡ 褒美に射精が出来るならどんな命令でも聞いてしまう程のなあ♡」
ビーストシルバー本人を前にして、ボアラバーはつらつらと勝利を宣言していく。
「同時に、自由に射精を行う権利を完全に剥奪する。そうすれば、頭の中がちんぽと忠誠心で一杯になった俺様の忠実なる下僕、ワルダーク戦闘員の出来上がりという訳だあ♡」
下卑た笑い声を上げるボアラバーに対し、師の放った白濁液に濡れながらレッドは弱々しく言い返した。
「師匠はそんな物に負ける人じゃ……」
「ガッハッハ〜♡ だそうだが……おい、お前が俺様に忠誠を誓う戦闘員なら、今すぐそれを示せ♡」
ボアラバーはそう言うと、その大きな足で尻を付いたビーストシルバーの背中を蹴り上げた。
「イ゛……ッ!」
ビーストシルバーは呻き声を上げると、今だけ半勃ちになったちんぽから精液を垂らしながら、足を曲げいそいそと立ち上がった。
「師匠……!」
黒の全身タイツに覆われた巨体のバーニーズマウンテンドッグ獣人の身体がボアラバーに対して向き直った。
射精が終わり拘束も何も無いこの状況。ボアラバーから下った命令は行動を強制する物ではなく、己を戦闘員と認めるならそれを示せという物。この中年のバーニーズマウンテンドッグ獣人が未だヒーロービーストシルバーなら、ボアラバーを攻撃する事も可能なのだ。
数々の怪人を屠り、ビーストブレイブ達を様々な方法で導いてきた黒のグローブを嵌めた手が持ち上がる。
上がった手は握り拳を作り、そのままボアラバーに振り落とされる──事は決してなく指を揃えて額の前にかざされた。
数々の怪人を逃がさない為、人々を危機から救い出す為にその体重を支え駆け続けた野太い両足が敬意を示す為にぴっちりと揃えられる。数々の怪人を討ち人々を守ってきた逞しい左腕が、無抵抗の意を表す為に腰にぴったりと付けられる。
全頭マスクから露出した口が開く。そして。
「イ゛ィーッ!! 自分は組織ワルダークの尖兵、戦闘員351号であります! 本日をもってヒーロービーストシルバーの名を捨て、偉大なる組織ワルダーク、総統閣下、ボアラバー様に永遠の忠誠を誓いますッ! イ゛ィーッ!!」
数々の人々を安心させてきた、ビーストレンジャーを導いてきた低い声で、ビーストシルバーは己が戦闘員だと宣誓した。
宣誓した瞬間、未だ硬さを宿したちんぽがビンッ♡ と気持ち良さそうに跳ねる。
それは尊敬する師、ビーストシルバーが雄の欲求に負け悪の手先に堕ちた決定的な瞬間であった。
「う、嘘だ! 師匠がワルダークの手下になんてなるはずがない!」
レッドがシールドに手を付き必死に訴えかける。しかし、戦闘員のタイツに身を包んだビーストシルバーは恍惚そうに口の端を歪めると、顔を少しだけレッドの方へ向け、息を浅く吐きながら興奮した様子で答えた。
「す、スマンなぁ……♡ 師匠はボアラバー様に身も心も、ちんぽも全て支配されてしまった♡ ボアラバー様の、総統閣下のご命令に逆らえないワルダークの戦闘員になってしまったのだ……♡」
「そんな奴のこと様付けで呼ぶなよ! 師匠はそんな人じゃない!」
レッドと言葉を交わしている間も、その屈強な肉体は敬礼のポーズを維持し、ボアラバーへの、組織ワルダークへの忠誠を示し続けていた。
最早ビーストシルバーにとって、愛する弟子達を裏切った罪悪感よりも、ボアラバーに対する敬意とワルダーク戦闘員としてのルールの方が優先なのだ。
しかし、忠実に戦闘員として振舞っているビーストシルバーに対し、ボアラバーは厳しい口調で話しかける。
「351号、何をしてる。戦闘員に勝手な発言は許されんぞお。ただ貴様は俺様の命令にだけ従う、思考の必要ない手下としてYESの意味だけを持つ掛け声を上げていればいいんだ……いいなあ?♡」
「ッ♡ イ゛ィーッ!!」
ボアラバーがそう命じると、ビーストシルバーはすぐさま顔をボアラバーに向き直し、再び背筋をピンと伸ばして奇声を上げた。
正義の為に戦い、鍛え続けたその肉体を全身全霊でボアラバーに忠誠を捧げる事に使う。そして、もう涙を訴えるレッドの方を見ることはなかった。
それを見たボアラバーは満足そうに腕を組んだ。それに対し、絶望的な表情を浮かべるレッドの背中に声がかかる。
「レッド! ビーストマグナムのチャージが終わりそうです! これでボアラバーを討ちますよ!」
見ればビーストマグナムの銃身が光り輝き、ブルーとイエローを照らしていた。
「でも……」
「師匠は操られているだけ……ボアラバーを討ち僕達で説得すれば、きっと元に戻るはずです! だから……!」
ブルーの訴えに絶望に打ちひしがれていたレッドの心が少しだけ晴れた。
そうだ。今はできる事をやるしかない。師匠信じて、悪を──ボアラバーを討つしかないのだ。
レッドがビーストマグナムの元へ駆け寄ると、三人は寄り添って再度銃身にエネルギーを込める。
「おいおいコイツはマズイんじゃねえか? 転送準備も完了してねえし……多分このシールドは破壊されるぞお。おい! 何て言ったか? お前の奥義……そうだなあ♡ 俺様直伝のワルダークナックルで迎え撃て♡」
「イ゛ィーッ!!」
ボアラバーの命令にYESの意味だけを持つ戦闘員の掛け声で答えると、戦闘員タイツに身を包んだビーストシルバーは躊躇う事なくボアラバーの前に立った。そして、ボアラバーの命令でようやくレッドに視線を戻し、ビーストレンジャーの前に立ちはだかった。
ビーストレンジャー三人に動揺が走る。しかし今は全力をぶつけるしかない。
ビーストシルバーごとボアラバーを撃ち抜き、ビーストマグナムを受けても、ビーストシルバーが無事でいることを祈るしかないのだ。
「行くぞ皆……!」
レッドの言葉にブルーとイエローが頷く。
レッドの手から燃え盛る炎のエネルギーが。ブルーの手から凍てつく氷のエネルギーが。イエローの手から轟き走る雷のようなエネルギーが銃身に注がれる。そして。
「「「獣装合体! 奥義、ビーストマグナム!!」」」
轟音と共に撃ち出された弾丸がシールドと激突する。着弾地点から瞬く間に亀裂が広がっていき、シールドベアラーが遺した最後の奥義を粉砕する。
光る弾丸はそのままボアラバー──そして、その間に立ち塞がるビーストシルバーへ向かって直進していく。
「ボアラバー様直伝奥義──」
ビーストシルバーが見慣れた構えを取る。しかし、普段のヒーロースーツではなく、悪の手先、戦闘員として同じ姿で。そして。
「ワルダークナックル!!」
ビーストシルバーの拳が光る弾丸に撃ち込まれる。
「ぐ、う……ッ!」
「イ゛ィ……イ゛……ッ!!」
黒い革のブーツを履いた足が踏み込んだ地面から亀裂が走り広がっていく。撃ち込まれたビーストシルバー右腕の筋肉が、ミシミシと音を立てる。
レッドは光る弾丸越しにビーストシルバーの一撃の重さを感じながら、悔しさで歯を噛み締めた。
(師匠の一撃はこんなものじゃない……)
専用のブラスナックルが無いからだけではない。正義の意志の元で放たれるビーストシルバーの一撃は、邪な悪に堕ちる事で確かに劣化していたのだ。
「イ゛ィ……ッ」
ビーストシルバーの口から呻き声が漏れる。光る弾丸が奥へと進む。そしてそのまま、ビーストシルバーを飲み込むのだった。
「……ッ!!」
眩い閃光と共に爆発が起き、土煙が舞い起こる。
ビーストマグナムを解き、それぞれのデバイスを武器に変形させながら、ビーストレンジャーはその光景を見守っていた。
「イ゛ィ……イ゛……」
土煙が晴れると、仰向けのガニ股になって倒れているビーストシルバーの姿が映った。ビクビクと太い手足を情けなく痙攣させ、戦闘員の呻き声を上げているが、命は落としていないようだった。しかし。
「ガーハッハァ♡ いや〜コイツは便利な収穫だったぞお♡ ビーストレンジャーの奥義を相殺できる奴○が一人増えちまうとは♡」
爆風による傷、土汚れが付いているものの、未だ健在のボアラバーの姿もそこにはあった。
「だが聞いてた強さじゃあ、ビーストマグナムを相殺してやり返すぐらいの事はしてくれると思ってたんだがなあ……ま、こんな歳のおっさんじゃこの程度の活躍が限界かあ♡」
「イ゛ィー……ッ♡」
そう言ってボアラバーはビーストシルバーを足蹴にした。しかし、酷評されぞんざいな扱いを受けているビーストシルバーは、何処か満更でもなさそうな戦闘員の奇声を上げて呻いた。
「お前……ッ! う……ッ」
レッドが逆上して斬りかかろうとするも、その場で膝を着き倒れそうになってしまう。
後ろを見れば、ブルーとイエローも武器を支えにしてその場に蹲っている。
激しい戦闘の末の二回の奥義。ビーストレンジャーも限界なのだ。
「もう少し頑張ればトドメをさせそうだが……俺様含めてこっちの奴らもぜーんいん体力ゼロだ♡ 転送準備も整ったし、ここは見逃してやるよお♡」
そう言ったボアラバーの身体が光に包まれていく。爆発の影響で倒れてしまった戦闘員達も同様だ。そして──。
「師匠……ッ!」
敬愛する師匠、ビーストシルバーの大きな身体も他の戦闘員達と同じように光に包まれていた。
そして、別れを告げる事もできないまま、その姿はその場から消えてしまうのだった。
こうして一体の強力な怪人の討伐と引き換えに、ビーストレンジャーの一員であり、三人の師匠であるビーストシルバーは悪の手に堕ちてしまった。
共に戦い稽古をし、頼れる背中を見せてくれたバーニーズマウンテンドッグ獣人の姿は何処にもない。これからは漆黒のタイツに身を包み、組織ワルダークの尖兵、ワルダーク戦闘員の一員としてビーストレンジャーの前に立ちはだかるのだろう。
果たしてビーストレンジャーはこれからの苦難を乗り越え続けることができるのだろうか──。
*****
数日後。組織ワルダークの秘密基地。
作戦準備室では大量の戦闘員が並びひしめき合っていた。
「それではこれより、ビーストレンジャーの秘密拠点強襲作戦についての説明を開始する!」
「「「イ゛ィーッ!!」」」
黒虎獣人の怪人の言葉に、ひしめき合った戦闘員達は同タイミングで美しい敬礼を行い、むさ苦しい男達の奇声によるハーモニーを奏でた。
この場にいる戦闘員達は皆、怪人ボアラバーの手によって性欲を利用され支配された被害者達だ。しかし、本人達に被害者としての意識は殆ど残っていない。組織ワルダークに、その総統に、その部下である怪人の手足となって働き、悪事に加担する事が彼等にとって生き甲斐なのだと根本から変えられてしまったのだから。
そして、敬礼して整列する戦闘員の中に一人の男の姿があった。
鍛え抜かれた筋肉の上に肉が付いた丸太のように太い四肢。小山のように膨らんだ張りのある二つの胸筋の下では、でっぷりと腹が突き出ており、描かれた351の識別番号を間抜けにアピールしている。
組織ワルダークの紋章、ニヤケ目がデザインされた全頭マスクから唯一覗くマズルと耳は、彼がバーニーズマウンテンドッグ獣人である事を示している。
全身を覆うタイツのせいで分かりづらいが、確かに彼はヒーロービーストシルバーその人であった。
「……」
目の前の黒虎の怪人を討ち、組織ワルダークを壊滅させる事が目的のはずのビーストシルバーは、従順に敬礼の所作を続け黒虎怪人の言葉に耳を傾けている。
それどころかボアラバーに命じられら決して知られてはならないビーストレンジャーの秘密拠点の位置も全てすらすらと話してしまった。黒虎怪人の口から語られる今回の強襲作戦も、ビーストシルバーの裏切りがなければ生まれなかった物だ。
(すまん゛ん……♡ 熊渡、レッド、ブルー、イエロー……♡♡ ワシはもう、組織ワルダークに逆らえん♡ 怪人様に支配され、ご命令に従い、戦闘員として身を粉にして働く喜びを知ってしまったのだ……♡)
背徳感に少しだけ身を捩り、熱の篭った息を吐く。興奮で勃起しそうになるが、それはボアラバーの手によって抑制され、タイツの股間部分に情けなく本来のサイズの膨らみを作るだけだ。しかしその管理されている状況にすら興奮するよう、ビーストシルバーは変えられてしまった。そして、いつか勃起が許可されあの何物にも代え難い快楽を伴う射精をする事を夢見て、戦闘員として命令に従うのだ。
「──さあ、二度目の説明はないぞ。作戦内容は頭に叩き込んだな? 貴様達戦闘員は俺様の手を必要以上に煩わせる事は許されない。貴様等は意志のない、俺様に使われるただの道具なのだからな」
黒虎怪人が戦闘員達を見渡しながら、ドスの効いた声でそう言い放った。
言葉通り、獣人を道具としか思っていない物言いだったが、それに怒りを覚えたり、異を唱える戦闘員はここにはいなかった。
「……ではこれより、ビーストレンジャーの秘密拠点強襲作戦を開始する! 着いてこい、戦闘員共!」
黒虎怪人が戦闘員達に号令を掛ける。敬礼をとり続ける戦闘員達に混じりながら、ヒーロービーストシルバーは。
「「「イ゛ィーッ!!!」」」
声を揃えてYESの意味を持つ奇声を上げ、悪の手先、ワルダーク戦闘員の一員として怪人の言葉に応えるのだった。
ビーストシルバーの精神は、もうこれほどまでに堕落してしまっていた。
ビーストレンジャーの声はもう、彼には届かないのかもしれない。
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獣装戦隊ビーストレンジャー 33話に続く
メタ的には終
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↓おまけのボツエピローグ↓
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組織ワルダークの秘密基地。豪華に装飾された謁見の間には、黒いカーペットが入口から壇上に向けて真っ直ぐ道になるように敷かれていた。
壇上には豪華に装飾された椅子が置いてあり、そこにはふくよかな身体付きの豚獣人──組織ワルダークを束ねる総統、ダブダーの姿があった。
「それで、報告というのは本当かね?」
「ガーハッハァ! 本当でございますダブダー総統! ……さあ、入ってこい351号!」
壇下で跪いていたボアラバーは入口方面へ声を掛けると、その奥から漆黒のタイツに身を包んだ巨体の戦闘員が現れる。
「イ゛ィーッ!!」
鍛え抜かれた筋肉の上に肉が付いた丸太のように太い四肢。小山のように膨らんだ張りのある二つの胸筋の下では、でっぷりと腹が突き出ており、刻まれた351の識別番号を間抜けにアピールしている。
組織ワルダークの紋章、ニヤケ目がデザインされた全頭マスクから唯一覗くマズルと耳は、彼がバーニーズマウンテンドッグ獣人である事を示していた。
全身を覆うタイツのせいで分かりづらいが、その巨体と身体付き、奇声越しでもわかる貫禄のある低い声を持つバーニーズマウンテンドッグ獣人は、ヒーロービーストシルバーその人であった。
「確かに、ビーストシルバーであるな。……こっちへ来い」
「イ゛ィーッ!!」
宿敵ダブダー総統の命令に戦闘員の掛け声で答えると、駆け足でカーペットの上を走り、ダブダー総統の目の前の壇下で足を止めた。
「イ゛ィーッ!!」
そして総統ダブダーに敬意と忠誠を示す為、再度ワルダーク戦闘員式敬礼のポーズをとるのだった。
「ビーストシルバー、私の事を覚えているな? 一度互いに相まみえ、貴様は私を必ず討つと吠えていた……しかし今の貴様はどうなっている? 答えろ」
二人にはビーストレンジャーも知らない因縁があった。そんな因縁の相手であるはずの宿敵ダブダー総統の問いに、ビーストシルバーは。
「イ゛ィーッ!! 以前のご無礼をお許しください! 哀れで恥ずべきビーストシルバーの名はもう捨てました! 今の自分は組織ワルダークの尖兵、ワルダーク戦闘員351号であります! 自分は怪人ボアラバー様、そしてダブダー総統閣下の為に働く命令に従う下僕!! どうな罰も受け、どんなご命令でもお応えいたします! 組織ワルダークに、ダブダー総統閣下に栄光あれ! イ゛ィーッ!!」
到底演技には見えない忠実な下僕となったビーストシルバー──戦闘員351号の姿を見て、ダブダー総統はくつくつと愉快そうに笑った。そして、その視線をボアラバーに向けると問いを投げかける。
「この男は貴様の能力で性欲を利用され支配されている……そして、操りやすいよう勃起を抑制しているのだったな?」
「はっ! その通りでございます、ダブダー総統♡」
「コイツの勃起を許可しろ」
「はっ!」
ボアラバーが指を弾くと、ビクンッ♡ と戦闘員351号がその身体を震わせた。すると、みるみる内に股間にテントが張り、その先端に勃起ちんぽのシルエットを浮き上がらせるのだった。
「イ゛ッ♡ イ゛ィーッ♡ ダブダー総統閣下♡ ボアラバー様♡ この哀れな奴○戦闘員めに発情勃起許可をいただきありがとうございますッ♡」
フンフンと鼻息を鳴らしながら、己を下僕に貶めたかつての敵二人に感謝をする。その無様な光景を見たダブダー総統はニタニタと笑みを浮かべる。
「宿敵である私に支配され気持ち良いか?」
「イ゛ィーッ♡ とても興奮しますッ♡♡ 自分をワルダーク戦闘員に変えていただき感謝しておりますッ♡♡」
ビクンッ♡ ビクンッ♡ とちんぽを震わせながら、かつての宿敵に媚びを売る。その姿に、ビーストレンジャーの知る頑固で生真面目な、正義に燃える師の姿は残っていなかった。
「くくく……あの男が性欲に支配され、こんな情けない奴○になってしまうとはな。そういえば、以前の無礼に対してどんな罰でも受けると言っていたな?」
「イ゛ィーッ♡」
総統ダブダーの言葉に戦闘員351号は戦闘員の掛け声と敬礼で答える。
「私の靴を舐めろ。罰と共に、身心共に屈服した奴○なのだと私に示すのだ」
「イ゛ィーッ♡」
戦闘員351号は元気に掛け声を上げると、いそいそと壇上に上がっていった。そしてすぐさま四つん這いになると、勃起ちんぽをユサユサ揺らしながら、ダブダー総統の足元へ這って進んでいった。
「くく……」
かつて自分と対峙した男が下僕の証に身を包み靴に手を添える。その状況を見下ろしながら、ダブダー総統は笑い声を漏らす。
戦闘員351号はその巨体を縮こませながら、ダブダー総統の履いた革靴の甲に舌を這わせるのだった。
「へッ♡ へはっ♡ れろッ♡ へッ♡」
浅ましく呼吸を繰り返しながら、べろべろと靴を舐め回し唾液で濡らしていく。勃起ちんぽは支配され屈○する喜びでビクンッ♡ ビクンッ♡ と跳ねながら先走りを飛ばし、尻の上から伸びる大きな尻尾はブンブンと左右に振れるのだった。
堪えきれなくなったダブダー総統の笑い声が謁見の間に響き渡る。
ビーストシルバーの精神は、もうこれ程までに堕落してしまっていた。
ビーストレンジャーの声はもう、彼には届かないのかもしれない。
終
Comments (2)
抜きました…戦闘シーンあると一層すごく興奮しますね…最高です。ビーストシルバーの堕ちぷりたまりません!
コメントありがとうございます! ちょっとくどいかな……と心配になりながら書いていたので良かったです……! 分配が難しいですがやはり普段の活躍や他のキャラとの関わりがあるほど落ちた時の反動が強くて良いですよね……!
